title: 閉鎖病棟の窓から見た空――あのとき、人生が変わった
categories: [闘病記, 精神障害]
閉鎖病棟の窓から見た空――あのとき、人生が変わった
誰にも頼れず、すべてができなくなった
ゴハンを食べることも、歯を磨くことも、入浴することもできない。
いや、そもそもベッドから起き上がることすらできなくなっていた。
家族もどう接していいかわからなくなり、ついに精神科病院への入院が決まった。
そこは、閉鎖病棟だった。
初めての世界に、戸惑いと共感があった
精神科病棟には、統合失調症や双極性障害Ⅰ型の方など、さまざまな精神障害を抱える人たちが入院していた。
私は入院後1週間、ベッドからまったく動けず、食事もすべてベッドの上。
やっと体を起こせるようになってから、他の入院患者さんたちと少しずつ話すようになった。
驚いたのは、彼らが「明らかにおかしい人」なんかではなかったこと。
みんな普通の人だった。むしろ優しくて、話していて楽しくて、すぐに友達になった。
でも、彼らは「しんどい」と言いながらも、うまく助けを求められない人たちだった。
自分の中にためこんで、限界になってから倒れてしまう。
それはまさに、私自身と同じだった。
鍵のかかった病棟と、心に残った言葉
閉鎖病棟は、文字通り病棟の出入り口に鍵がかけられている。
勝手には出られないし、出るときは必ず看護師の付き添いが必要。
窓もスリガラスになっていて、外の景色は見えない。逃走防止のために、頑丈に作られていた。
ある日、私たちは病棟でこう話した。
「なんで私たち、こんなところにいるんかな?」
でも、答えはみんなわかっていた。
社会の中では、うまくやっていけなかった。
ちゃんと病気で、でも助けをうまく求められない――だからここにいるんだと。
一度だけ、空が見えた日
ある日、病院にセラピードッグが来てくれた。
そのときだけは特別に、みんなで中庭に出ることが許された。
5月の晴れた日だった。空はまるで洗いたての布のように澄んでいて、風が頬にやさしかった。
誰かが言った。
「外の世界って、やっぱりいいね」
「空って、こんなにも青かったんだ」
そのとき、私たちは確かに、「生きてる」ことを感じた。
あの空を見た瞬間、心の奥に小さな種のような希望が芽生えたのを、私は今でもはっきり覚えている。
あの青空が教えてくれたこと
あの日、中庭で見上げた空は、
「出口のない部屋」にいる私たちに、小さな出口を見せてくれた。
私が人生をあきらめるのをやめたのは、
「人生って、まだ何かあるかもしれない」と思えたのは――
きっと、あの日の空があったから。
人生が変わった、その言葉を今あなたに
“空が見えた日、私はもう一度、生きてみようと思った。”
ここまで読んでくださって、ありがとうございました。
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