title: 犬の散歩ができた朝――それが、私の“社会復帰の一歩”だった
categories: [闘病記, 社会復帰]
犬の散歩ができた朝――それが、私の“社会復帰の一歩”だった
もう自分で動くことすらできなかった日々
私は双極性障害Ⅱ型と診断される前、
5回の閉鎖病棟入院と2度の自殺企図を経験しました。
ご飯も食べられず、歯を磨くことも入浴することもできない。
ベッドから起き上がることさえできない日は、何の希望も見えませんでした。
感情を取り戻した治療法、電気けいれん療法(ECT)
2度目の自殺未遂をきっかけに、主治医から治療法の一つとして提案されたのが 電気けいれん療法(ECT) でした。
ECTは、全身麻酔下で短時間の電気刺激を脳に与える治療法です。
現代のECTは安全性が非常に高く、薬物療法が難しい場合の有効な選択肢とされています。
→ ECTについての信頼できる解説(verywellhealth.com)
桜吹雪の中、心がやわらかくほどけた退院の日
退院したのは、4月。
外の世界は春の気配に満ち、桜が風に舞っていました。
散りゆく花びらが優しく包み込むように感じられ、私はその光景に心を動かされました。
「生きていてよかった」
そう思えたのは、ほんのわずかな風の感触と、やさしい桜の色でした。
セラピードッグの記憶が、私の背中を押してくれた
閉鎖病棟での入院中、一度だけ病院にセラピードッグが来てくれたことがありました。
その日、私たちは病院の中庭に出ることができました。
犬と触れ合い、春の風を感じるそのひとときは、
それまで張りつめていた心がふっとほどけるような時間でした。
そして退院後、ふとそのときのことを思い出しました。
「もう一度、あの気持ちを味わいたい」
そう思った私は、自宅で飼っていた愛犬の散歩に行ってみることにしたのです。
「生きる」を再び感じた、犬との朝の散歩
ある朝、自然と目が覚めて、
なんとなく「外に出たい」と思えた。
愛犬と一緒にゆっくり歩く道。
草のにおい、ひんやりとした空気、誰もいない早朝の景色――
そのすべてが、“生きていること”を教えてくれました。
ただの散歩かもしれない。
でも私にとっては、再び「人生が動き出した」瞬間でした。
小さな一歩が、回復の大きな礎に
この「犬の散歩ができた朝」は、社会復帰の第一歩でした。
外に出る、動く、朝を迎える――それだけでも、私にとっては大きな前進。
今、私は就労移行支援にも通いながら、ゆっくりですが社会への一歩を取り戻しています。
そしてまさに、「小さなできた」が積み重なっていくことの大切さを実感しています。
あなたにも伝えたいこと
あなたの胸の奥にも、きっと“もう一度、前を向いていい”という声が届く朝が来ますように。
小さな出来事が、人生のターニングポイントになることがあります。
それを信じて、「今の自分」を少しだけ大切にしてくれたらうれしいです。
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